コラム

 公開日: 2012-08-14  最終更新日: 2015-06-05

【20.会社合併・会社分割(書類作成代理・登記申請の代理)】

☆逐次、情報を更新しておりますので、最新の情報は、当事務所のホームページをご覧ください。
http://www.taguchi-shihou.com/gyoumu/index.html


 (当事務所の取扱業務)
① 登記申請の代理、登記申請書作成、登記申請手続事務の相談
② 合併契約書等文案書類の作成代理、文案書類作成の相談
③ 許認可手続書類の作成代理、提出手続代理、手続書類作成の相談
④ 登記に関する審査請求手続(不服申立手続)についての代理
 

(第1 会社合併 ・ 第2 会社分割 ・ 第3 会社法における株式交換・株式移転制度 ・ 第4 事業譲渡・営業譲渡)
会社が、「①事業再生の手法としたり」、「②財務内容を改善し競争力を高めたり」、「③関連分野の技術を獲得してより安定した経営をする」には、さまざまな方法があります。
その代表的な方法が「①会社合併 ②会社分割 ③株式交換・株式移転 ④事業譲渡」です。
(1) 会社合併
ア 意義
会社合併とは、2つ以上の会社が会社間の契約(合併契約)によって、一方の会社に合体することです。
イ 会社合併の種類
会社合併には、「吸収合併」と「新設合併」とがあります。
(ア) 吸収合併―合併当事会社の一つを存続会社とし、消滅会社はその権利 義務を存続会社に承継させて解散する方式の合併のことです。
(イ) 新設合併―合併当事会社は全て解散して消滅し、これと同時に新たな会社を設立して、消滅会社の権利義務の全部を新設会社に承継させる合併のことです。
ウ 会社合併の方法
(ア) 普通合併
各当事会社の株主総会の特別決議によって、合併契約の承認を受けなければなりません。
* 特別決議とは
「総株主の議決権の過半数の株主」又は「定款に定める議決権を有する株主」が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成を必要とする株主総会の決議のことです。
(イ)簡易合併
存続会社は、取締役会の承認があれば、株主総会の決議が不要な場合の合併のことです。
ただし、消滅会社は、株主総会の特別決議が必要です。
(理由)
存続会社と比較して消滅会社の規模が小さく、存続会社の株主に及ぼす影響が軽微なためです。
(ウ)略式合併
被支配会社の株主総会の承認決議を省略できます。>
(理由)
吸収当事会社の一方が、他方の当事会社を支配している場合には、被支配会社の株主総会を開催しても、承認されることは明らかなためです。
* 被支配会社が、消滅会社でも存続会社でも可能です。
エ 合併の法的効果
(ア)会社が合併すると、消滅会社は解散します。新設合併の場合は新設会社が設立されます。
(イ)消滅会社の権利義務は、清算手続を経ることなく包括的に存続会社又は新設会社に移転します。
* 権利移転の対抗要件
対抗要件を必要とするものについては、その手続(例:登記・登録・占有の移転)が必要です。
(ウ)消滅会社の株主の権利
あ 新設合併の場合
合併により、消滅会社の株主は、新設会社の株主となります。
い 吸収合併の場合
存続会社の株式以外の金銭その他の財産が、消滅会社の株主に交付されたときを除き、消滅会社の株主が存続会社の株主となります。
オ 会社合併のメリット
(ア)財政状況が良好な会社との合併により、会社の運営資金(現金)が潤沢になることにより、前向きの仕事に集中できます。
(イ)資本力や増強や、技術力の向上が期待できるので、競争力が増します。
(ウ)引継資産の償却が可能なので、節税効果を得られます。
カ 会社合併の可否(疑問点)
(ア)債務超過会社との合併は可能か?
あ 「資本欠損」あるいは「債務超過状態にある会社」を消滅会社とする会社合併も可能です。
い 実質債務超過会社との合併も可能です。
*実質債務超過会社の意味
「財産の評価やのれんの計上」によって資産評価を行ったとしても、債務超過となる会社のことです。
(イ)破産会社等との合併
あ 破産手続中の会社との合併
不可能です。
い 清算中の会社との合併 
清算中の会社を消滅会社とする合併のみ可能です。
う 民事再生・会社更生手続中の会社との合併
民事再生法・会社更生法の規定に従ってのみ、合併が可能です。

(2) 会社分割
ア 意義
会社分割とは、会社が有する事業を分離することにより、「経営の効率化や企業の再編」を図るための制度です。
会社法(平成18年5月1日施行)では、分社型分割のみが認められています。
* 分社型分割の意味
分割承継会社の受ける対価に対し、分割承継会社の発行する株式等を分割法人に割当てる会社分割のことです。
つまり、分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産が、その分割の日において、分割法人の株主等には交付されません。
イ 会社分割の種類
会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」があります。
(ア)吸収分割―既に存在する会社に、分割会社の業務の一部または全部を承継させる方式の会社分割。
(イ)新設分割―業務を承継させる会社を分割と同時に設立して、分割会社の業務の一部または全部を承継させる方式の会社分割。
ウ 会社分割のメリット
「①業務を細分化して競争力を高められる」、「②財務内容を改善できる」、 「③借入金が過大もしくは債務超過の状態にあり、借入金の返済負担及び金利負担が大きい企業においては、会社分割もしくは事業譲渡の手法を利用して債務を整理し、事業の再生を図ることができる」
エ 会社分割の可否(疑問点)
「債務超過」・「資本の欠損」と会社分割の可否
下記のいずれの場合も、会社分割が可能です。
①分割会社において、資本の欠損が生じている場合
②分割会社が、分割の結果、資本の欠損が生じるような会社分割
③分割会社が、債務超過となる会社分割
④承継される事業が、債務超過である会社分割
*あ 債務超過の意義
債務者の負債総額が、資産の総額を超える状態にあること。
つまり、資産の全てを売却しても、負債を返済しきれない状態にあること。
い 資本の欠損の意義
「会社の純資産額(資産の額-負債の額)」が、「資本金と法定備金(資本準備金・利益準備金)の合計額」より少ないときで、債 務超過の状態になっていないとき。
う 「分割会社・新設会社・吸収会社」が債務超過でも、会社分割が可能です。
第1 吸収分割について
(ア) 吸収分割契約の承認
あ 株主総会の承認
吸収分割をするには、吸収分割会社及び吸収分割承継会社において、原則として、吸収分割契約を株主総会の特別決議により承認することが必要です。
* 株主総会の「普通決議」と「特別決議」の意義
①普通決議の意義
総株主の過半数が出席し、出席株主の過半数の賛成で成立する決議のことです。
(なお、定款で、出席した株主のみで総会が成立する旨の定めをすることもできます。)
②特別決議の意義
総株主の過半数が出席し、出席株主の3分の2以上の賛成で成立する決議のことです。
(なお、定款で、出席した株主のみで総会が成立する旨の定めをすることもできます。)
い  種類株主総会の承認
吸収分割会社又は吸収分割承継会社が吸収分割に関する拒否権付種類株式を発行している場合には、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とします。
う  簡易分割
「吸収分割会社の場合は、会社法784条3項」、「吸収分割承継会社の場合は、会社法796条3項」に定める要件を満たす場合には、株主総会の承認決議を要しません。
え 債権者保護手続
吸収分割承継会社の債権会社は、吸収分割承継会社に対し、吸収分割について異議を述べることができます。したがって、吸収分割承継会社においては、必ず債権者保護手続を行うことが必要です。
(イ) 吸収分割手続のフローチャート
① 会社分割計画書の作成

② 取締役会の承認決議

③ 会社分割契約の締結

④ 会社分割契約についての株主総会承認決議

⑤ 債権者異議申述公告

⑥ 株主総会において、会社分割決議に反対した株主に対する株式買取り請求手続

⑦ 会社分割の効力発生期日
(ⅰ)吸収分割=会社分割契約で定めた期日に、分割の効力が発生する。
(ⅱ)新設分割=新設会社の設立登記の日に、分割の効力が発生する。

⑧ 会社分割登記の申請
(ウ)吸収分割の効力
あ 権利義務の包括承継
吸収分割契約において定められた吸収分割の効力発生日をもって、 吸収分割の効力が生じると、承継会社は分割契約書の記載に従い、分割会社の権利義務を承継します。
(エ)債務の承継と債権者保護
分割会社の債務についても、分割契約書に記載することにより、債権者の個別の承諾を要せずに、当然に承継会社に承継されることから、債権者の保護を図るため、債権者保護手続が定められています。
債権者保護手続において、各別の催告を受けなかった債権者に対する法定の弁済責任が定められています。
(オ)権利の承継と対抗要件
あ 不動産・船舶・株式について
(あ)不動産について
吸収分割による不動産所有権の承継は、「不動産に関する物権の得喪及び変更」として移転登記等が必要です。
(い)船舶について
吸収分割による船舶所有権の承継は、「船舶所有権の移転」として、移転登記等が必要です。
*①船舶登記の対象は20トン以上の船舶であり、船舶登記簿に登記されます。「所有権・抵当権・賃借権」の登記が可能です。
②20トン未満の漁船は農業用動産として農業用動産登記簿に登記することができます。「所有権・抵当権」の登記が可能です。
(う)株式について
株式については「株式の譲渡」として、株主名簿の名義書換えが必要です。
い 動産・債権について
動産・債権については、明文上「譲渡」の場合に限って対抗要件を具備することが要求されています。
(あ) 合併の場合
合併は包括承継であり、譲渡ではないので、合併による動産・債権の承継については対抗要件を具備する必要はありません。
(い)会社分割の場合
会社分割の場合は、分割後も分割会社は存続し、承継させた権利の二重譲渡の危険性があるので、対抗要件を具備する必要性が高くなります。
したがって、会社分割による動産・債権の承継については、民法178条、467条を類推適用し、占有の移転や譲渡通知等の対抗要件を具備することが必要となります。
(カ)継続中の訴訟の承継
あ 当該金銭債務が会社分割による承継の対象とならなかった場合
分割会社のみが当事者となり、原告は、分割会社を被告として、引き続き訴訟を追行することになります。
い 当該金銭債務が会社分割による承継の対象となった場合
承継会社が、自ら訴訟参加の申立をし、又は相手方の訴訟引受の申立により、当事者となります。
分割会社は、相手方(原告)の承諾を得て、訴訟から脱退することができます。なお、相手方が訴訟脱退を承諾しないときは、分割会社は分割に基づく免責的債務引受の効果を主張するなどして、請求棄却を求めることになります。
第2 新設分割について
(ア) 新設分割計画の承認
あ 株主総会の承認
新設分割をするには、新設分割会社において、原則として、新設分割計画を株主総会の特別決議により承認することが必要です。
い 種類株主総会の承認
新設分割会社が、新設分割に関する拒否権付種類株式を発行している場合には、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を必要とします。
う 簡易分割
新設分割をする場合に、会社法805条に定める要件を満たすときは、株主総会の承認決議は不要です。
え 債権者保護手続
新設分割をする場合、新設分割会社の債権者は、新設分割後に新設分割会社に対して債務の履行を請求することができないときは、新設分割会社に対し、新設分割について異議を述べることができます。
したがって、新設分割会社においては、原則として、債権者保護手続きを行うことが必要です。
(イ) 新設分割の手続
①分割契約書の作成
新設分割の会社分割を行うためには、新設分割計画を作成する必要があります。
②基準日
新設分割計画の承認を得る株主総会において、議決権を行使し得る株主を確定するため、議決議行使のための基準日を設定する必要があります。
③株主総会招集通知の発送
ⅰ  招集通知
株主総会の招集通知は、会日より2週間前(譲渡制限会社においては、原則として1週間前)に各株主に対して発送することを要します。
ⅱ  株主総会参考書類
招集に際して、書面決議によることができると定めた場合は、株主総会参考書類及び議決権行使書類を併せて交付しなければなりません。
④事前開示
分割する会社の取締役は、原則として、株主総会の会日の2週 間前より分割の日の後6か月を経過するまで、新設分割計画等の書類を会社の本店に備え置かなければなりません。
⑤労働者との協議
労働者に対する関係では、会社の分割に伴う労働契約の承継に関しては、分割会社は、労働契約承継法(会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)2条1項に基づく通知をすべき日(具体的には、総会の会日の2週間前)までに、労働者と協議することが義務付けられています。
⑥株主総会
新設分割計画承認のためには、株主総会の特別決議が必要です。
⑦債権者保護手続
ⅰ  意義
会社分割に際して、会社債権者に対し、異議を述べる機会を提供し、異議を述べた債権者については、その債権者が分割により害されるおそれがないときを除いて、弁済や担保提供をしなければならない旨を定めた手続をいいます。
ⅱ  趣旨
会社分割により、承継する債務、会社財産が債権者の承諾なく、分割を行う会社によって決定され、これに伴い、債権者にとって引当てとなる財産が減縮してしまう可能性があります。そこで会社分割により重大な影響を受ける会社債権者の保護を図るための手続が設けられています。
ⅲ  具体的手続
(ⅰ) 対象債権者
a 分割債権者のうち、会社分割後に分割会社に対し債務の履行を請求できなくなるもの
b 分割会社が、分割対価である株式等を株主に分配する場合の分割会社の債権者
(ⅱ) 会社債権者に対する公告及び個別催告 
(ⅲ) 異議を述べた債権者への対応
債権者が異議を述べた場合、分割してもその債権者を害するおそれがないときを除いて、弁済期の到来している債権者に対しては弁済し、弁済期が到来していない債権者に対しては、相当の担保の提供又はその債権者に弁済受けさせることを目的として、信託会社に相当の財産の信託をしなければなりません。
ⅳ 合併の場合との相違
a 合併の場合
官報及び定款で定めた日刊新聞紙による公告を行ったときは、知れたる債権者に対する個別の催告は不要とされています。
b 会社分割の場合
分割会社に対する不法行為債権者に対しては、各別の催告は省略することができません。
ⅴ  社債権者が異議を述べる場合
社債権者も会社に対する債権者ですが、異議を述べるためには、社債権者集会における決議によることを要します。
ⅵ  各別の催告を受けなかった債権者の取扱い
新設分割計画において、債務を負担しないこととされた会社も弁済責任が負わされています。
*弁済責任の限度額
「分割会社は、会社分割の効力が生ずる日に有した財産の価額」、「承継会社は、承継した財産の価額」を限度とします。
⑧ 反対株主の株式買取請求権
ⅰ  意義
会社分割に反対する株主に対し、自己の有する株式を分割の承認決議がなければ有したであろう公正な価格で買い取るべきことを、会社に対し請求することができる制度です。
ⅱ 趣旨
会社分割が行われた場合、分割会社の財産状態は大きく変動し株主の地位に重大な影響を及ぼすことが考えられるので、株主を保護することが必要とされます。
このため、合併、資本減少の場合と同じく、投下資本の回収を認め、株主に対し経済的保護を与えることとしました。
ⅲ 具体的手続
(ⅰ)新設分割計画承認の株主総会に先立って、会社に対し、書面にて会社分割に反対の意思を通知した上で総会に出席し、決議の際、反対の意思表示を行い、会社に対して、自己の有する株式を買い取るよう請求することになります。
(ⅱ)分割会社は、新設分割計画承認の総会決議の日から2週間以内に、その株主に対して新設分割をする旨と新設会社の商号及び住所を通知しなければなりません。
(ⅲ)買取請求は、上記通知又は公告の日から20日以内に、株式の種類及び数を記載した書面を会社に提出して行わなければなりません。
(ⅳ)株式の価格は、株主と会社との間で協議が調った場合、分割会社は、新設会社が成立した日から60日以内にこれを支払う必要があります。
⑨分割の登記
会社分割がなされたときは、分割会社については変更登記を、新設会社においては、設立登記をしなければなりません。
⑩事後開示
分割当事会社の取締役は、分割の効力が生じた日以後、法務省令で定めた事項を記載(記録)した書面を作成し、6か月間備え置いて、株主・債権者・その他利害関係人の閲覧又は謄本・抄本の交付請求に応じなければなりません。
⑪対抗要件
第三者に対し、新設会社に権利が承継されたことを対抗するためには、登記などの対抗要件を備えなければなりません。
⑫分割無効の訴えの機関の満了
新設会社成立の日から6か月の経過により、分割無効の訴え期間が満了し、事前開示、事後開示の書類の備置きを要する期間も満了します。

(3)会社法における株式交換・株式移転制度 
平成11年の商法改正では、完全親子会社関係、すなわち子会社の株式の100%を保有する親会社とその子会社との関係を円滑かつ簡易に創設するため、株式交換及び株式移転の制度を導入しました。
近年、企業は、企業グループを形成して事業を行い、国際的競争力の向上や企業経営の効率化を目指していますが、グループ化のためには、完全親子会社の創設は極めて有用です。
株式交換・株式移転の制度によって、企業は、簡易、迅速に完全親子会社をつくることができるようになりました。
ア 株式交換
(ア)平成11年改正商法は、株式会社は、その一方が他方の発行済み株式を有する会社(これを「完全親会社」と称し、他方を「完全子会社」と称します)となるため、株式交換ができると規定しました。
(イ)株式交換により、完全子会社となる会社の株主の有するその会社の株式は、株式交換の日に、株式交換によって完全親会社会社に移転しその完全子会社となる会社の株主は、その完全親会社となる会社が株式交換に際して発行する新株の割当てを受けることにより、その日に完全親会社の株主となります。
*平成18年施行の会社法
旧商法では、株式交換・株式移転の対価は、親会社となる会社の自己株式に限定されていましたが、会社法においては、対価の柔軟性が認められ、金銭・社債・新株予約権・新株予約権付社債等を対価として用いることができるようになりました。
(ウ)株式交換は、グループ企業内の会社を完全子会社としたり、グループ外企業の買収のために利用されています。
イ 株式移転
(ア)平成11年商法は、株式移転について、株式会社は完全親会社を設立するため、株式移転をすることができると規定しました。
(イ)株式移転によって、完全子会社となる会社の株主の有するその会社の株式は、株式の移転によって設立する完全親会社に移転し、その完全子会社となる会社の株主は、その完全親会社が株式移転に際し発行する株式の割当てを受けることにより、その完全親会社の株主になります。
*平成18年施行の会社法
旧商法では、株式交換・株式移転の対価は、親会社となる会社の自己株式に限定されていましたが、会社法においては、対価の柔軟性が認められ、金銭・社債・新株予約権・新株予約権付社債等を対価として用いることができるようになりました。
(ウ)株主移転は、平成9年独占禁止法の改正で解禁された純粋持ち株会社(自ら事業を行わない会社)の創設のために利用されています。
 (エ)株式移転により、純粋持株会社を簡易に設立することができ、その後さらに、株式交換や会社分割を行うことにより、純粋持ち  株会社を頂点に指揮命令系統の整備されたグループ企業の組織の再編成が可能となりました。

(4)事業譲渡
   ア 事業譲渡の意義
   (ア)事業譲渡の定義
      事業譲渡とは、株式会社が事業を取引行為(特定承継)として他に譲渡する行為をいいます。
    *①会社法及び商法は、事業譲渡の手続(会社法467条から470条まで)や事業譲渡によって生じる競業避止義務等(会社法21条から24条まで、商法16条以下)についての規定を設けています。しかし、「事業譲渡」や、譲渡の対象となる「事業」の定義については明確に定めていないので、これらの定義は、今なお解釈に委ねられています。
     ②なお、事業譲渡は、他の組織再編(会社合併、会社分割、株式交換、株式移転)と異なり、全ての会社形態(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)を含め、およそ商人であれば行いうるものであり、会社法21条から24条までは共通の規制で括って規制しています。
一方、会社法467条から470条までは、株式会社が事業譲渡を行う場合の手続を規制しています。
   (イ)会社法上の「事業譲渡」と商法上の「営業譲渡」
      会社法は、会社法制定前の商法が使用していた「営業譲渡」という用語を、「事業譲渡」に変更しました。
      これは、複数の商号を用いて複数の営業を行うことができる個人商人に対して、会社は、複数の営業を行う際にも1つの商号しか用いることができないことから(会社法6条1項)、会社が行う営業の総体を、「営業」と区別するために「事業」と呼ぶことにしたからです。
  イ 事業譲渡の手続
   (ア)事業譲渡契約の締結
      事業譲渡は、特定承継の法律効果を発生させるために行われる取引行為であるため、譲渡会社(譲渡人)と譲受会社(譲受人)との間の事業譲渡契約の締結によって行われます。
      (事業譲渡契約書のポイント)
       ①事業譲渡対象部門
       ②譲渡期日
       ③譲渡財産
       ④対価及び支払方法
       ⑤財産移転手続
       ⑥競業避止義務・従業員の引継ぎ等に関する事項
       ⑦株主総会決議の期日
       ⑧譲渡会社の善管注意義務、事情変更による契約解除の可能性、契約に定めのない事項に関する協議義務
   (イ)譲渡会社における手続
     あ 取締役会の決議
       事業譲渡は取引行為であるが、譲渡対象となる事業は、通常「重要な財産」に当ると考えられるので、取締役会の決議を要します。
     い 取締役会の決議に加え、株主総会の特別決議を要する場合
       譲渡の対象が、事業の全部又は重要な一部であり、譲渡対象資産の帳簿価額が譲渡会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超える場合は、譲渡会社は譲渡日までに株主総会の特別決議による承認を受けなければなりません。
     う 反対株主の株式買取請求権
       事業譲渡に反対する株主には、株式買取請求権を行使することが認められています。
      *「反対株主」とは、以下の株主のことをいいます。
       (ⅰ)事業譲渡等をするために株主総会(種類株主総会を含む)の決議を要する場合、当該株主総会に先立って当該事業譲渡に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ 、 当該株主総会において当該事業譲渡等に反対した株主
          (当該株主総会において、議決権を行使することができるものに限る)
       (ⅱ)当該株主総会において、議決権を行使することができない株主
   (ウ)譲受会社における手続
     あ 取締役会の決議
       事業譲渡は、事業を譲り受ける側の会社にとっては、「重要な財産の譲受け」に当るため、取締役会の決議を要します。
     い 取締役会の決議に加え、株主総会の特別決議を要する場合
       譲り受ける事業が、他の会社の事業の全部である場合には、取締役会の決議に加えて、株主総会の特別決議を要します。
     う 反対株主の株式買取請求権
       事業譲渡に反対する株主には、株式買取請求権を行使することが認められています。
      *「反対株主」とは、以下の株主のことをいいます。
       (ⅰ)事業譲渡等をするために株主総会(種類株主総会を含む)の決議を要する場合、当該株主総会に先立って当該事業譲渡に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ 、 当該株主総会において当該事業譲渡等に反対した株主
          (当該株主総会において、議決権を行使することができるものに限る)
       (ⅱ)当該株主総会において、議決権を行使することができない株主
      ※当事務所は、「会社合併・会社分割、株式交換・株式移転、事業譲渡」の手続につき、契約書の作成、取締役会・株主総会議事録の作成、許認可手続、登記申請代理などにより、会社・事業再編の業務を取り扱ってきております。
   ウ 事業譲渡におけるチェックポイント
   (ア)譲渡会社の競業の禁止
      あ 譲渡会社は、同一市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはなりません。
      い 譲渡当事者間において、競業避止義務を負わない旨を合意することは可能です。
      う 譲渡会社が、同一事業を行わない旨の特約をした場合は、その特約は、その事業を譲渡した日から30年間に限りその効力を有します。
   (イ)譲渡会社の商号を引き続き使用した譲受会社の責任等
      あ 事業譲渡契約に「債務を引き受けない旨」の定めがある場合
       原則として、譲受会社は譲渡会社の債権者に対して責任を負いません。
      い 譲受会社が、譲渡会社の商号を引き続き使用する場合
       譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います。
      う 譲受会社が、譲渡会社の負担債務の弁済責任を負わない方法等
       ① 「譲渡会社の負担債務の弁済責任を負わない旨」の登記
          譲受会社が事業を譲り受けた後、遅滞なく、その本店所在地において、「譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨の登記」をした場合は、譲受会社は責任を負いません。
       ② 知れたる債権者に対する「弁済責任を負わない旨」の通知
         事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対し、その旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者に対しては、責任を負いません。
       ③ 譲受会社が商号の続用により、譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合
         譲受会社の責任は、事業を譲渡した日後2年以内に請求又は請求の予告しない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅します。
       ④ 譲渡会社の商号を続用した譲受会社にした弁済
         譲渡会社の事業によって生じた債権について、譲受会社にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときはその効力を有します。
   (ウ)譲受会社による債務の引受 
      下記の場合は、譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して、譲渡会社の債務の弁済を請求することができます。
                     記
       ① 譲受会社が商号を続用しなくても、債務引受の公告をした場合
       ② 個別の債権者に対し、債務を引き受ける旨の通知をした場合
   (エ)商人との間での事業の譲渡又は譲受け
      個人(自然人)の場合は、事業の譲渡のことを「営業譲渡」といいます。商法においても、「営業譲渡」に関する定めがあります(商法15条~18条)。                       
      営業譲渡においては、当事者を「譲渡人、譲受人」と定義しています。
       ① 商法・会社法の適用関係
        (ⅰ) 個人(自然人)としての商人相互間の営業譲渡については、商法が適用されます。
        (ⅱ) 会社相互間の事業譲渡については、会社法が適用されます。
       ② 譲渡人・譲渡会社の商号を続用した譲受人・譲受会社の責任(商法17条、会社法22条)
        (ⅰ)譲受人が、譲渡人の商号を続用する場合(商法17条)
           譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負います。
        (ⅱ)譲受会社が、譲渡会社の商号を続用する場合(会社法22条)
           譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います。
       ③ 債務を引き受ける旨の広告をした場合における譲受人・譲受会社の責任等(商法18条、会社法23条)
        (ⅰ)譲受人が、譲渡人の商号を続用しないが、「譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告」をした場合(商法18条)
          譲渡人の債権者は、その譲受人に対して、弁済の請求をすることができます。
          ただし、譲受人の責任は、広告があった日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対してはその期間を経過した時に消滅します。
       (ⅱ) 譲受会社が、譲渡会社の商号を続用しないが、「譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告」をした場合(会社法23条)
           譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して、弁済の請求をすることができます。
          ただし、譲受会社の責任は、広告があった日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対してはその期間を経過した時に消滅します。
       ④ 営業譲渡・事業譲渡をした当事者の一方が会社で、他方が会社以外の商人である場合には上記の規定(商法17条~18条、会社法22条~23条)は、そのまま適用されません。
         そのため、下記のように、「上記の規定が適用される場合の定め」を設けています。
       (ⅰ)会社が会社以外の商人に対してその事業を譲渡した場合 (会社法24条1項)
          当該会社を、商法16条1項に規定する譲渡人とみなして、商法17条(譲渡人の商号を使用した譲受人の責任等)及び商法18条(譲受人による債務の引受)の規定が適用される旨を定めています。
       (ⅱ)会社が、会社以外の商人から、その営業を譲り受けた場合(会社法24条2項)
          当該商人を譲渡会社とみなして、会社法22条(譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等)及び会社法23条(譲受会社による債務の引受)の規定が適用される旨を定めています。
      *事業譲渡の詳細は、「27.事業譲渡」をご覧ください。

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